2023年 4月

石川県庁の記者室で取材を受ける石川民医連の職員(左から川合相談員、藤牧県連事務局次長、城北病院の大野院長、柳沢副院長)手前は記者

石川民医連は6日、石川県庁記者室で記者発表を行い、「75歳以上医療費窓口負担2割化実施後影響アンケート調査」と「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」結果を公表しました。

医療費2割化の高齢者の4割が生活を切り詰めている

藤牧圭介事務局次長から「75歳以上医療費窓口2割化実施後影響調査アンケート」の概要を報告し、「昨年10月から2割負担となった高齢者の約4割が預金を切り崩したり、交際費や生活費を切り詰めて受診している。」と紹介。「高齢者は、物価高騰のもと、年金も減らされ、経済的余裕のある人は少ない。困難が進行している。今国会でも保険料引き上げが議論されており、高齢者全体に不安が高まっており、受診控えで状況が悪化し、手遅れとなる危険性が広がっている。」と実態を告発しました。

決して裕福とは言えない世帯が2割化の対象になっている

城北病院の大野健次院長は、障害のある家族を抱え、年金収入のみの75才の患者が来月の誕生日で後期高齢者となり窓口負担1割になると思っていたのに、世帯収入の状況から2割の対象となると知り落胆されていることを紹介し「決して裕福と言えない世帯が2割になっている」と現状を訴えました。

資格証明書の発行により受診が遅れ死亡に至った事例

つづいて城北病院の川合優相談員からは、全日本民主医療機関連合会が行った「2022年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」46事例のうち石川民医連が報告した1事例の内容を紹介しました。

男性は国民健康保険料を滞納し資格証明書を渡されていました。たまたま様子を見にいった姉がやせ細り身動きも取れない状態の弟を発見し、医療費のこともあり市役所等に生活保護の相談に行ったが「車の保有」を理由に断られ、藁にもすがる思いで無料低額診療を行っている城北病院を紹介された時には既に手遅れで亡くなった事例を紹介しました。

同席した柳沢深志副院長は、初診時に担当した医師の声として「小柄で痩せた方でした。すでに膵癌の多発肝転移の状態で、肝不全も併発していました。自宅にいるころから誰か職場の人などとの交流があって、受診を勧めてくれるような環境があればもう少し早く受診できたのにと思います。お姉さんの訪問がもう少し遅かったら、孤独死していたと思います。」と紹介。「少なくとも、お金がなくてとか、お金が心配で病院に受診できず、手遅れになったという事例はあってはならないことと強く思います。」と訴えました。

柳沢副院長「医師にしてみれば、必要なときに受診してくれれば、治療もできます。しかし、病院に来れなかったり、来る時期が遅れてしまうと、医師はどうしようもありません。こういう事例を二度と生まない、そんな施策を行政はしっかりとっていただきたいと切に思います。」

弟と同じように苦しんでいる人を救う手助けになれば

川合相談員はこの事例をもとに自治体担当課と懇談し、資格証明書の発行中止を求めましたが、市側から発行中止の意思は示されませんでした。

男性が亡くなられた半年後に川合相談員が姉に電話をしたところ「ようやく弟の死を受け入れられるようになった。」「弟の死は”仕方なかった”と自分に言い聞かせるようにしている」と答え、「弟と同じように苦しんでいる人を救う手助けになるのであれば、報道機関にも報告してほしい」と今回の記者発表に了承をいただきました。

手遅れ死亡事例をなくすために

本来、国民の命と健康を守るための国民健康保険制度によって国民の命が奪われている現実。国民健康保険の資格証明書発行は事実上、医療にかかる道を途絶えさせてしまっています。私たちは、運動として毎年自治体に資格証明書の発行中止を求めていますが、いまだに発行は続き、手遅れ死亡事例は後を絶ちません。すべての市民に保険証を交付すべきであり、そもそも保険料を滞納せざるを得ないほどの高い保険料の引き下げが必要です。制度に当てはめるのではなく「なんとかしてあげられないか」という自治体窓口での市民目線での真摯な対応が求められます。

私たちが訴えたいこと

石川民医連は75歳以上の医療費2割化の中止を県として国に求めること、「受療権」の侵害にかかわる資格証明書の発行を中止し、高すぎる国保料を引き下げること。経済的に困難なときでも医療を受けられる無料低額診療制度を周知徹底することなど、住民のいのちと健康にかかわる「受療権保障」を統一地方選挙の要求として掲げています。

今回の石川県議会議員選挙の各候補者に「石川民医連の基本要求」を届け、重要な要求についてのみ賛否を伺うアンケートを実施しました。

※郵送時に連絡先住所が不明な候補者には実施できていません。

※また〆切日時(3/30 17時まで)に当方届いていない方についても公開していません。

下記リンクからPDFデータをご覧いただけます

金沢市 

野々市市・白山市

加賀市・中能登町

能美・川北

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